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『波止場』 [洋画(ハ行)]

「波止場」(1954)(再)★★★★90点
原題: ON THE WATERFRONT
監督: エリア・カザン
製作: サム・スピーゲル
原作・脚本: バッド・シュールバーグ
撮影: ボリス・カウフマン
音楽: レナード・バーンスタイン
出演:
 マーロン・ブランド(テリー・マロイ)
 エヴァ・マリー・セイント(イディ・ドイル)
 リー・J・コッブ(ジョニー・フレンドリー)
 ロッド・スタイガー(チャーリー・マロイ、テリーの兄)
 カール・マルデン(バリー、神父)
 パット・ヘニング(ヂューガン)
 マーティン・バルサム(ドイル、イディの父)
 リーフ・エリクソン(グローヴァー)
 ルディ・ボンド(ムース)
 ジェームズ・ウェスターフィールド(ビッグ・マック)
受賞: 
 アカデミー賞
  ■作品賞
  ■主演男優賞: マーロン・ブランド
  ■助演女優賞: エヴァ・マリー・セイント
  ■監督賞: エリア・カザン
  ■脚本賞: バッド・シュールバーグ
  ■撮影賞(白黒): ボリス・カウフマン
  ■美術監督・装置賞(白黒): リチャード・デイ(美術)
  ■編集賞: ジーン・ミルフォード
 ヴェネチア国際映画祭
  ■サン・マルコ銀獅子賞: エリア・カザン
  ■イタリア批評家賞: エリア・カザン
 NY批評家協会賞
  ■作品賞
  ■男優賞: マーロン・ブランド
  ■監督賞: エリア・カザン
 ゴールデン・グローブ
  ■作品賞(ドラマ)
  ■男優賞(ドラマ): マーロン・ブランド
  ■監督賞: エリア・カザン
  ■撮影賞(白黒): ボリス・カウフマン
 英国アカデミー賞
  ■男優賞(国外): マーロン・ブランド
製作・ジャンル: 米国/ドラマ/108分

波止場 [DVD]








ニューヨークの港を舞台に
貨物の積下しを仕切るギャングと、それに立ち向う沖仲仕達の姿を
元ボクサーの若者を主人公に描いた映画。
演出は、アクターズ・スタジオの創始者の一人で、
メソッド演技法を確立したE・カザン。

最初にこの映画を観たのは、今から20年以上前である。
メソッドやマイズナーに興味を持ちはじめ
その筋に詳しい演出家から、観ることを勧められた作品だった。
すぐに観たものの、当時の私は "これのどこが面白いのか" と一蹴。
演出・演技の素晴らしさに気づけない未熟者だった。
「いずれ分かる時が来る」とその演出家に言われたまま
今日までこの作品を再び観ることはなかった。
いつ私が、本作の素晴らしさを理解する域に達したか分からないが
今、彼の言葉の意味をしっかと噛みしめている。

ストーリーは
敬愛する赤木圭一郎が出演した日活映画にもありがちだが、
リアリズムを追求したカザンと、娯楽を追求した日活とでは
かくも出来上がりが違ってくるものか。

鳩舎での
イディとテリーのやりとりは出色。
そのありきたりの台詞は
主義ゆえの抵抗と抗いがたき恋情を織り交ぜた命を吹き込まれ、
逡巡しつつも寄り添おうとする二人の心模様が
見事に表現されている。
これぞ、メソッド演技の真骨頂といったところだろうか。

本作が映画デビューとなるE・M・セイントが
アカデミー助演女優賞を手にしたのも頷ける。

デューガンが事故を装って殺され
神父が船倉でジョーたちを天の名の下に糾弾した後、
神父とジョーイの父、そしてデューガンの遺体を乗せたリフトが
船倉から甲板へと釣りあげられていくシーン。
それは、あたかもデューガンの魂が天に召されていくようである。

深夜、亡き兄の上着を手に、屋上の鳩舎にテリーを訪ねるイディ。
その時、テリーは "鳩が鷹に怯えている" ことを口にするが、
奇しくも、ジョニーに怯える自身の心理を表出する形になる。
この短いラブシーンにもグッと引き込まれる。

テリーの元にやってきた刑事が
「公聴会にはエレベーターが欲しい。階段は苦手でね」と告げる。
これは、
真実の解明にテリーの証言が大きな役割を果たすことを暗示し
テリーに証言を促しているわけだ。
こういったなぞらえにも、練られた脚本・緻密な演出を感じる。

脚本の上手さを感じるといえば、
兄チャーリーが、弟の行動をめぐって選択を迫られるシーンもしかり。
競馬予想について
「3着に来るのはニューホープか」と尋ねる仲間に向かって、
ジョニーの側近は "Definitely(間違いねえ)" と答える。
次に、チャーリーに選択を迫る自分が正しいことを確認する上で
ジョニーが "My right track?(俺は間違ったこと言ってるか)"
と側近に尋ねる。
ここでも、その側近は "Definitely(仰せのとおり)" と答えるのだ。

こうした掛詞・なぞらえは、英語に頻繁に登場するが
この作品でもそれが効果的に用いられている。

タクシーでの会話からイディ宅のシーンまでの大仰な効果音は
とっても邪魔に感じた。
リアリズムを追求するなら、まったく不要ではないだろうか。

証言をしたテリーに対し
イディの父親までが背を向けるのは解せない。
また、その態度にイディが憤りも意見もしないことも同様。
ジョニーの報復に怯えるのは分かるが、
罪悪感を感じている様子すらないのはどういうわけか。

当時のハリウッド映画に新風を吹き込んだメソッド。
特に、すでに記したテリーとイディのシーンをはじめ
タクシー内での兄弟の会話など、
ツーショットのシーンにその奏功を見てとれる。

メソッドが支持を集めるのに貢献した俳優といえば
J・ディーン、A・パチーノ、P・ニューマンらが挙げられるが
第一人者はやはり、マーロン・ブランドであろう。
アカデミー主演男優賞を受賞した本作での演技は見事。
バリー神父に扮するK・マルデンとのシーンにおける
ブランドの繊細な視線の動きは秀逸。

メソッド演技については、批判や懐疑論も多いが
少なくとも、この傑作の評価を下げるものではない。
 
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『ふたりの5つの分かれ路』 [洋画(ハ行)]

「ふたりの5つの分かれ路」(2004)★★☆☆55点
原題: 5X2
監督・脚本: フランソワ・オゾン
製作: オリヴィエ・デルボス、マルク・ミソニエ
脚本: エマニュエル・ベルンエイム
撮影: ヨリック・ル・ソー
衣装: パスカリーヌ・シャヴァンヌ
音楽: フィリップ・ロンビ
出演:
 ヴァレリア・ブルーニ=テデスキ(マリオン)
 ステファン・フレイス(ジル)
 ジェラルディン・ペラス(ヴァレリー)
 フランソワーズ・ファビアン(モニク)
 アントワーヌ・シャピー(クリストフ)
 マイケル・ロンズデール(ベルナール)
 マルク・ルシュマン(マチュー)
製作・ジャンル: フランス/ドラマ・ロマンス/90分

ふたりの5つの分かれ路 [DVD]








一組の夫婦の出会いから離婚までを
時間軸を逆に辿りながら描くラブ・ストーリー。

作品は離婚手続きを行っているシーンで始まる。
原題の『5X2』から、
この離婚に至るまでに、5つのエピソードがあって
それぞれの瞬間に、別の選択肢を選んでいれば…
という "もしも" 映画だと予想していた。

しかし、この作品は
"もしも" 映画でもなければ、
冒頭の離婚そのものも、5つの分かれ路の一つだと分かった。

現在から過去へと時間を遡る描き方は、今となっては陳腐な手法。

本作とは逆に
時系列的にエピソードを並べるならば
出会い・結婚・出産・結婚生活のワンシーン・離婚
といった具合に、何の変哲もない人生行路である。

出会いには、長年の恋人との間に不協和音を
結婚には、妻の不貞を
出産には、夫の妻に対する不信を
夫婦生活のワンシーンには、体と心のすれ違いを
離婚には、離婚成立直後の虚しい体のやり取りを
ちりばめている。

それはどれも
各々が情動によって導かれ、心がすれ違ってしまう瞬間である。

つまり、
5つのエピソードを取り上げて
それが、あたかも
彼らの人生の分かれ路であったかのような捉え方をしているが、
それは分かれ路などではなく、
二人が日々積み上げてきた軋轢や亀裂の結果にすぎない。

ところで
フランス人には普通のことなのか、
私には理解できない行動がいくつか。

まず、離婚直後にホテルで関係を持つこと。
恋人との別れ際、"最後にもう一度" という男性心理なら理解できる。
だが本作では、別れる前でなく、後。
しかも、女性が積極的に同意している。

出産の際の、夫ジルの行動。
上にはその原因を、"妻に対する不信" と記した。
それは
ジルの兄とそのゲイの恋人を食事に招いたシーンにおける
「誘惑に勝つことができたら、自分を強い人間だと思える」
というマリオンの台詞や、
結婚初夜に通りすがりのアメリカ人と情事に走る彼女の行動から、
マリオンは決して身持ちのいい女性ではない
という私の推測に基づくものである。
だが、果たしてそうだろうか?

かといって
父親になることの不安や自信のなさといった
ジル自身に原因を求めるのも説得力がない。

あるいは
ジルは実はゲイ[バイ]だった、という説明ならつくかもしれない。
カリプソでの尻文字ダンス、
ディナーで語る浮気時の体位。
"マチューと兄がすぐに別れる" というジルの発言も
ホモセクシャル的資質が為せる嫉妬とも取れる。

エピソードをエピソードたらしめている
根幹ともいうべき部分が明確に伝わらないようでは、
疑念を持たせることで以って、見せかけのミステリーを装っている、
と受け取られても仕方ない。

やはり、フランス映画は難しい。
私に理解力がないのだと言われればそれまでだが、
分かる人がいたら、嫌味でなく、是非解説をお願いしたい。

時間を経て、美しい出会いから悲しい別れへ。
この作品の良さを挙げるなら、
現実には不可能な時間の逆行を利用することで
取り戻せない過去の輝きを
より物悲しく切なく表現し得た点であろうか。

ところで、フランス映画音痴の私は
フランソワ・オゾンという新進の映画監督の名前すら知らなかった。

さらには
主演のヴァレリア・ブルーニ・テデスキは、
サルコジ元フランス大統領の妻、カーラ・ブルーニの姉だそうである。
図抜けてはいないが、美しく魅力的な女優という印象。
セックスアピールのある美人にとどまらず
メイクと表情で、年齢を巧みに演じ分けていた。
 
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『ボディ・ダブル』 [洋画(ハ行)]

「ボディ・ダブル」(1984)★★★★☆点
原題: BODY DOUBLE
監督・製作・脚本: ブライアン・デ・パルマ
脚本: ロバート・J・アヴレッチ
撮影: スティーヴン・H・ブラム
編集: ジェラルド・B・グリーンバーグ
音楽: ピノ・ドナッジオ
出演:
 クレイグ・ワッソン
 メラニー・グリフィス
 グレッグ・ヘンリー
 デボラ・シェルトン
 デニス・フランツ
 バーバラ・クランプトン
 アネット・ヘヴン
 レベッカ・スタンリー
受賞:
 全米批評家協会賞
  ■助演女優賞 メラニー・グリフィス
製作・ジャンル: 米国/サスペンス/114分

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『僕らのミライへ逆回転』 [洋画(ハ行)]

「僕らのミライへ逆回転」(2008)★★★☆☆55点
原題: BE KIND REWIND
監督: ミシェル・ゴンドリー
製作: ジョルジュ・ベルマン
製作総指揮: トビー・エメリッヒ
ガイ・ストーデル
脚本: ミシェル・ゴンドリー
撮影: エレン・クラス
プロダクションデ
ザイン: ダン・リー
衣装デザイン: ラエル・エイフィリー
キシュー・チャンド
編集: ジェフ・ブキャナン
音楽: ジャン=ミシェル・ベルナール
音楽監修: リンダ・コーエン
出演:
 ジャック・ブラック(ジェリー)
 モス・デフ(マイク)
 ダニー・グローヴァー(フレッチャー)
 メロニー・ディアス(アルマ)
 ミア・ファロー(ファレヴィチ)
 チャンドラー・パーカー(クレイグ)
 アーブ・グーチ(ウィルソン)
 シガーニー・ウィーヴァー(ミス・ローソン)
 アージェイ・スミス(マニー)
 ジオ・ペレス(ランディ)
 バーシア・ローザス(アンドレア)
 トーマス・ソルティーズ(カール)
製作・ジャンル: 米国/コメディ/101分

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立ち退きを迫られるレンタルビデオ屋を舞台に
若い従業員とその仲間たちが巻き起こす大騒動を描く。

原題 "BE KIND REWIND" は、
"返却の際は巻き戻しを" というレンタルビデオに書かれた言葉。

このノリにはついていけないなあとテンション下がるほど
ウザいJ・ブラックの空騒ぎで物語の幕が開く。

マイクに留守を任せた店長が気がかりなのが
ジェリーの存在。
電流を浴びすぎ、ジェリーが磁気を帯びた体になる
というありえない設定から、
磁気テープがやられて、店にあるビデオが全部お釈迦に。
そこから、既成作品を自分たちで手作りリメイクする。
荒くて雑な作りなのに、何故か大受け。

雑なセットでも、編集や効果で
結構見られる映像に仕上がるものだな、と思った。
尤も、実際には
ハリウッドの一流プロが製作しているわけで
素人にあんな芸当は無理だということも分かっているが。

M・ファローやS・ウィーヴァーは
贅沢にもちょい役での登場。
グローヴァーも完全にサポート役に回っている。
先日観た「BAT★21」から20年、
若々しかった彼も、初老の落着きがすっかり板についた。

ラストの上映会で、
映画の光を反射して輝くファローの顔は
「カイロの紫のバラ」を思い出させる。
おそらく、それを狙ったショットと推測される。

観始めは、単なるおバカコメディかと思った作品だったが
最後は、静かな感動でグッとくる。
あれで、"立ち退かなくて済むようになりました" という
ご都合主義のハッピーエンドに収めないところも好感が持てる。
はっきり言って
この映画はラストだけ、
このラストシーンあっての作品と言えるので
ネタバレありありの本ブログでも、内容は伏せておく。
 
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『パニック・イン・スタジアム』 [洋画(ハ行)]

「パニック・イン・スタジアム」(1976)★★★☆☆60点
原題: TWO-MINUTE WARNING
監督: ラリー・ピアース
製作: エドワード・S・フェルドマン
原作: ジョージ・ラ・フォンテイン
脚本: エドワード・ヒューム
撮影: ジェラルド・ハーシュフェルド
特殊効果: アルバート・ホイットロック
音楽: チャールズ・フォックス
出演:
 チャールトン・ヘストン(ピーター・ホリー、警部)
 ジョン・カサヴェテス(クリス・バトン、SWAT班・巡査部長)
 マーティン・バルサム(サム・マッキーヴァー、スタジアム支配人)
 ウォーレン・ミラー(カール・クック、狙撃犯)
 デヴィッド・ジャンセン(スティーヴ)
 ジーナ・ローランズ(ジャネット)
 ボー・ブリッジス(マイケル・ラムジー)
 パメラ・ベルウッド(ペギー・ラムジー)
 リード・ダイアモンド(ラムジーの子ども)
 ブラッド・サヴェージ(ラムジーの子ども)
 ジャック・クラグマン(ステュー・サンドマン)
 デヴィッド・グロー(アル)
 マリリン・ハセット(ルーシー)
 ジョン・コークス(ジェフリー)
 ジョー・カップ(チャーリー・タイラー)
 ブルック・ミルズ(タイラーの彼女)
 ミッチェル・ライアン(神父)
 ブロック・ピータース(ポール、スタジアムの管理主任)
 アンディ・シダリス(TVディレクター)
 ウォルター・ピジョン(スリ)
 ジュリー・ブリッジス(スリの相棒)
 ウィリアム・ブライアント(キャロウェイ、警部補)
 ヴィンセント・バジェッタ(テッド・シェリー)
 アラン・ミラー(グリーン)
 ロバート・ギンティ(売り子)
 J・A・プレストン(警官)
製作・ジャンル: 米国/サスペンス・パニック・アクション/113分

パニック・イン・スタジアム [DVD]








一人のスナイパーが
大観衆がプロフットボール選手権に湧くスタジアムを
恐怖に陥れる70年代のパニック映画。

冒頭、スナイパー目線で追う数々の映像がスリルを盛りたてる。
ただ、臨場感を増さんがための、
カーラジオの音声が却って邪魔に感じる。

第一の発砲が、支配人を狙ったように見えるが
真のターゲット、目的が最後まで判明しないまま
スナイパーのが死んでしまうため
折角、冒頭で積み上げた
ミステリアスなスナイパー像が全く活かされずに終わってしまう。

映画の大半は、のちに銃弾に倒れる人たちにスポットを当て
それぞれの人間模様を描いて進行。

C・ヘストン演じる警部は、事件解決の指揮に当たるが
カサヴェテス扮するSWAT班長ともども
大した活躍の場がない。

カサヴェテスの妻、G・ローランズも出演。
夫との絡みこそないが、
その個性的な容貌が圧倒的な存在感を示す。
本当に素敵な女優だなあ。

そのローランズのパートナーを演じるのはD・ジャンセン。
ドラマ「逃亡者」で、リチャード・キンブルとして一世を風靡した
D・ジャンセンが登場するのが嬉しい。
私も昨年、120話からなる同作をほとんどのエピソードを観たので
懐かしい親友に再会したような思いである。
そのジャンセン演じるスティーヴが
狙撃犯の放った第一の銃弾によって、あっけなく倒れてしまうのは、
「逃亡者」の中で、4年もの長きにわたり
ジェラードの執拗な追跡から逃げのびた彼を揶揄しているようにも。

タイトルの "TWO-MINUTE WARNING" とは
試合終了2分前を期限に、SWATに狙撃許可を与える
というホリー警部からバトン班長への約束。

パニックを避けるために、迅速かつ整然と展開するSWAT班。
GOサインを皮切りに、
見どころの一つ、SWAT vs スナイパーのシークエンスが始まる。
数の面からも、絶対的優位に見えたSWATたちが射殺されていく。
試合に熱中する観客を前にして、
宙吊りになったSWAT隊員の死体のショットは衝撃的。
今にも観客がパニックに陥らんサスペンスが広がる。

もう一つの山場は、パニックになった群衆が逃げ惑うオーラス。
どれだけのエキストラが動員されたのだろう。
その数もさることながら、
我先にスタジアムの外へ逃げる群衆の映像は圧巻。
将棋倒しになるショットもあったように思うが
実際に、撮影では事故や怪我も起きたことだろう。
図らずも、誰かが偶然つまずいて、将棋倒しで圧死
という事態が起きていても、何らおかしくない。
そんな危惧を抱かせるほど
他人を踏み倒し押し退けて逃げる観衆の姿が凄まじい。
 
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『BAT★21/バット21』 [洋画(ハ行)]

「BAT★21/バット21」(1988)★★★☆65点
原題: BAT 21
監督: ピーター・マークル
製作: デヴィッド・フィッシャー、ゲイリー・A・ニール、マイケル・バルソン
原作・脚本: ウィリアム・C・アンダーソン
脚本: ジョージ・ゴードン
撮影: マーク・アーウィン
音楽: クリストファー・ヤング
出演:
 ジーン・ハックマン(アイシール・"バット21"・ハンブルトン中佐)
 ダニー・グローヴァー(バーソロミュー・"バードドッグ"・クラーク大尉)
 ジェリー・リード(ジョージ・ウォーカー大佐)
 デヴィッド・マーシャル・グラント(ロス・カーヴァー、ヘリパイロット)
 クレイトン・ローナー(ハーリー・ランボー軍曹)
 エリック・アンダーソン(ジェイク・スコット曹長)
 ジョー・ドーシー(ダグラス大佐)
製作・ジャンル: 米国/ドラマ・戦争/105分

bat21.jpg

爆撃作戦を前に、偵察に出かけ撃墜された機から脱出。
戦場に一人放り出された将校と
その救出に奔走する偵察機パイロットの友情を
ベトナム戦時中の実話に基づいて描く。

タイトルの "バット21" とは、
電子兵器の専門家であるハンブルトン中佐のコードネーム。
同様に、"バード・ドッグ" も
偵察機を駆るクラーク大尉のコードネーム。
"バード・ドッグ" が
戦闘機を意味する軍隊スラングということは分かるが、
"バット" は文字通り、コウモリ爆弾を指すのだろうか。

夜中、すぐそばを通過するベトコンたち。
現場で米国兵が味わったその恐ろしさと言ったらないだろうな、
とベトナム戦争絡みの映画を見るたびに思う。

と同時に
常にアメリカサイドから見たベトナム戦争しか描かれないが、
ベトコンや現地の民間人だって、同じように
恐ろしい思いをしたに違いないのである。
これは、ベトナム戦争に限らず、
どの戦争にも言えることで、
トラウマを抱えた帰還兵が大勢いるのも、当然の帰結かもしれない。

子供との交流エピソード。
森に仕掛けられた串刺しの罠から中佐を守るベトナム人の少年。
お互いに礼の品をやりとりし、少年は手を振って去っていく。
戦争の緊張感の中に差し挟まれる、一時の優しい時間である。

これがハンブルトンが実際に体験した話かどうかは不明だが、
冒頭で、図らずも民間人を殺してしまったことを痛く気に病んだり
ベトコンが民間人を楯にしていれば、攻撃するな、と指示したり
といった具合に、
ハンブルトンという男には、戦争に携わる者ながら
一貫して命を尊重する姿勢が見える。

そんな人物を、
非情・卑劣な輩に扮することの多い
G・ハックマンが演じているというところが憎らしい。
実話を尊重して戦闘部分を地味に描いているであろう本作。
その中に入っては、浮いてしまうような派手な演技は一切封印。
さすが、どんな演出にも対応できる技巧派ぶりを見せている。

その中佐を救出する偵察機のパイロットには
良心の人から悪役まで幅広くこなすD・グローヴァー。
この作品では、もちろん前者である。
黒人訛りを全開にして、
ユーモアある、不器用な正義漢を好演している。

中佐一人を助けんがために
逆に、ヘリの乗組員たち四人が死亡する。
結果的に、犠牲者の数で言ったら、
助けに行かずともよかったのでは、などと一瞬感じた。
当たり前の話だが、冷静に考えれば
中佐の重要な立場・専門知識を別にしても
生存者を見殺しになどできないのだ。

救出ヘリのパイロットであるロスは、クラークの親しい戦友。
こちらの二人の友情については、描き方が中途半端で
ロスが地雷を踏み射殺されるシーンが全く響いてこない。

ところで、作品のストリームからは捨象されてしまっているが、
中佐と同乗していた戦闘機の乗組員は、どうなったのか。
墜落直後に中佐が訊ねる以外、最後まで触れられることはない。
観るほうとしては気になるのだが、
おそらくは発見不可能・死亡と言うことなのだろう。

脚色を抑え
派手なアクションものに仕立てなかったことで
主役二人の絆・友情を
静かだが確かな形で訴えることに成功している。

物語の大半、中佐と大尉のやりとりは無線のみ。
相手の姿形を知らなかった二人が
救出に成功した末に、初めて顔を合わせた感慨を
何かしら見たかったなあ、というのが心残りか。
 
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『ブロークン・フラワーズ』 [洋画(ハ行)]

「ブロークン・フラワーズ」(2005)★★★★☆80点
原題: BROKEN FLOWERS
監督・脚本: ジム・ジャームッシュ
製作: ジョン・キリク、ステイシー・スミス
撮影: フレデリック・エルムズ
プロダクションデザイン: マーク・フリードバーグ
衣装デザイン: ジョン・A・ダン
編集: ジェイ・ラビノウィッツ
出演:
 ビル・マーレイ(ドン・ジョンストン)
 ジェフリー・ライト(ウィンストン)
 シャロン・ストーン(ローラ)
 フランセス・コンロイ(ドーラ)
 ジェシカ・ラング(カルメン)
 ティルダ・スウィントン(ペニー)
 ジュリー・デルピー(シェリー)
 クロエ・セヴィニー
 アレクシス・ジーナ
 マーク・ウェバー
受賞:
 カンヌ国際映画祭
  ■審査員特別グランプリ ジム・ジャームッシュ
製作・ジャンル: 米国/ドラマ・コメディ/106分

ブロークンフラワーズ [DVD]








監督はJ・ジャームッシュ。
プロとしての処女作「ストレンジャー・ザン・パラダイス」、
「ダウン・バイ・ロー」、
永瀬正敏と工藤夕貴が出演した「ミステリー・トレイン」など
ロードムービーの印象が強い。
とは言うものの
私は、宣伝や断片的な映像を見たことがあるだけで
いずれの作品も、本編を観た記憶はないのだが。

この映画も
差出人不明の一通の手紙をきっかけに、
昔の恋人たちを訪ねて歩く物語だ。

パソコンで物を書くのが普通になっている現在、
活版によって、文字の濃淡が浮き出るタイプライターの文字は
味があって懐かしい。
郷愁を誘うその書体が、タイトルやクレジットに使われている。
そして、ストーリーの口火となる手紙は
タイプライターで書かれているという流れだ。

タイプライターといって私が思い浮かべるのは
子供の頃、毎日のように論文をタイプしていた父親の姿、
学生時代の、ディベートための資料作り、
劇団の研究生の時に
小道具として用いたT・ウィリアムズの「ロング・グッドバイ」。
私には、縁浅からぬアナログ機器である。

また、シーンの溶暗にも、アナログな効果を導入している。
ブラックアウトする寸前、映像が
フィルムの反転ネガのように、かすかな残像を残す。

主人公の名前は、ドン・ファンことドン・ジョンストン。
ドン・ジョンソンに引っ掛けた名前も、色男を暗喩している。

ドン・ジョンソンと言えば
80年代は「特捜刑事マイアミバイス」でスターダムを駆け上がり、
90年代半ばからは「刑事ナッシュ・ブリッジス」で再び注目を浴びた
自他共に認めるセクシーでワイルドな俳優である。

ドンをけしかけ、旅に送り出すお節介なウィンストン。
彼がドンの為に用意し、全編を通じ断片的に流れるエチオピア音楽。
その音楽が、このロード・ムービーを
またまた、言い知れないアンニュイで哀愁に満ちたものにしている。

ベッドを共にした翌朝。
ローラの唇がだらしなくドンの顔に触れている様は
飾らない自然な画を演出したかったのだろうが、
逆にその意図が鼻について、悪い意味で気になった。
エロ気を前面に出さないS・ストーンの、
自然体の演技にはとても好感を持った。

終始、ローテンションのドン。
怒り叫ぶコメディアンのイメージの強いB・マーレイが、
ジャームッシュの演出のもと
あえて、決して激することのないキャラクターとして演じることで、
観客はいつの間にか、ドンに親しみを覚え
彼と共に、人生の哀歓を共有するのである。

もちろん、同じストーリーを
ハイテンションで描き切ることも可能だろうが、
この作品の主人公の低いトーンこそが、
彼の存在とストーリーに、リアリティをいや増している。

また、最後まで何の答えも出ないところにも
リアリティを感じる作品である。

カンヌ映画祭の審査員グランプリを受賞した本作。
その支持に納得の傑作と言えよう。

それにしても、
20年前の恋人たちを訪ね歩くなんて
自分に照らして考えると、ずいぶん悪趣味な話だ。
接触を持たないという条件づきならば、
歳月を重ねた彼女たちの姿を覗き見たい気はする。
だが、ドン同様に
お互いの現実を比較しては
相手を貶めたり、現在の自らを蔑んだりするはめになるのがオチで
ろくな旅にならないのが実際のところではないだろうか。
 
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『ハイ・クライムズ』 [洋画(ハ行)]

「ハイ・クライムズ」(2002)★★☆☆50点
原題: HIGH CRIMES
監督: カール・フランクリン
製作: ジェシー・ビートン、アーノン・ミルチャン、ジャネット・ヤン
製作総指揮: リサ・ヘンソン、ケヴィン・レイディ
原作: ジョセフ・ファインダー『バーニング・ツリー』
脚本: ユーリー・ゼルツァー、グレイス・ケイリー・ビックレイ
音楽: グレーム・レヴェル
出演:
 アシュレイ・ジャッド(クレア・キュービック)
 モーガン・フリーマン(チャールズ・W・グライムス)
 ジェームズ・カヴィーゼル(トム・キュービック/ロナルド・チャップマン軍曹)
 アマンダ・ピート(ジャッキー・グリマルディ、クレアの妹)
 アダム・スコット(テレンス・エンブリー中尉)
 マイケル・ガストン(ルーカス・ウォルドロン少佐)
 ブルース・デイヴィソン(ビル・マークス准将)
 フアン・カルロス・エルナンデス(ジェームス・ヘルナンデス少佐)
 マイケル・シャノン(トロイ・アボット)
 ジュード・チコレッラ(ファレル大佐)
 エミリオ・リヴェラ(サルバドル人)
 トム・バウアー(マリンズ、FBI捜査官)
製作・ジャンル: 米国/サスペンス・犯罪/115分

ハイ・クライムズ <特別編> [DVD]







子供を授かることを願いながら
順風満帆なキャリアを積み上げる女性弁護士。
平和な暮らしが聖夜に一変、
海兵隊の機密の闇に飲み込まれていくサスペンス映画。

M・フリーマン扮するグライムスをパートナーに得て
不当逮捕された夫の無実を晴らそうとする過程は
こういった巨大組織を相手に奮闘する定型を裏切らない。

しかし、定型を踏襲するわりには
真相を探る過程で遭遇するサスペンス要素が弱い。
おまけに
クレアの、マークス准将に対する脅しが効いて
あっけなくトム訴追が取り下げられ、裁判が終結する。
軍隊という常識の通用しない組織に勝利する、という物語の流れを、
それだけで一本の立派な作品になるくらいに仕上げなければ、
どんでん返しは
容易に観客に予測されてしまい、何の効果も発揮しない。
メキシコに調査に行ったグライムスが勝利の場に不在となれば
なおさらのことである。

法廷サスペンスとしては、スッカスカの作品。

クレアとグライムスの間に育まれる友情については
演じた俳優の魅力に支えられて、しっかり描かれている。

ただ、元アル中のグライムスが酒に手を出す部分などは
本人があっさり改心して解決、
絆を深める要素にも、物語のスパイスにもなっていない。

真相解明と事件終息の立役者である
サルバドル人を演じたE・リヴェラが一番目立っていた。
 
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『人妻』 [洋画(ハ行)]

「人妻」(1999)★★★☆☆60点
原題: FOREVER MINE
監督・脚本: ポール・シュレイダー
製作: キャスリーン・ハース、エイミー・J・カウフマン、ダミタ・ニカポータ
製作総指揮: ジュリア・パラウ、マシュー・ペイン
撮影: ジョン・ベイリー
音楽: アンジェロ・バダラメンティ
出演:
 ジョセフ・ファインズ(マヌエル・エスケマ/アラン・リプリー)
 レイ・リオッタ(マーク・ブライス)
 グレッチェン・モル(エラ・ブライス)
 ヴィンセント・ラレスカ(ハビエル・セスティ)
 マイク・ワトフォード(リック・マルティノ)
 リンジー・コネル(スチュワーデス)
 ケヴィ・カツラス(ジュリー)
 シャノン・ローソン(エミリー、ジュリーの母)
製作・ジャンル: 英国=カナダ=米国/ロマンス・サスペンス・エロティック/118分

人妻 [DVD]







不倫愛に身を投じた青年の復讐をメインに据えたラブ・サスペンス。

主役の青年を演じるのは、のちに
「恋に落ちたシェイクスピア」で俄然注目を浴びたJ・ファインズ。
本作でも、「恋に落ちた~」のシェイクスピア役同様、
真っすぐな恋に邁進する男性を演じている。

ヒロインのG・モルは、とても綺麗な女優だが
今までまったく知らなかった。
彼女の裸体美が不倫愛の官能度をアップさせている。

不倫相手に制裁を加える夫・マークの詰めの甘さ、
アランの復讐劇の巧妙度・執着心の薄さ、
スリルのない、マークによる報復、
どれをとっても中途半端の一言。

相棒役のハビエルが、一番面白いが
彼の役どころは、さほど本筋に絡んでこないので
そのユニークなキャラクターも
一人徒花を咲かせる結果に。

主役3人の俳優の実力・キャリアを鑑みるに
駄作に終わった元凶は、
脚本・演出のP・シュレイダーにあると言って間違いない。
「タクシー・ドライバー」の脚本家として脚光を浴びた彼も、
他に特筆する作品がないことも事実。
 
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『ベン・ハー』 [洋画(ハ行)]

「ベン・ハー」(1959)(再)★★★★85点
原題: BEN-HUR
監督: ウィリアム・ワイラー
製作: サム・ジンバリスト
原作: ルー・ウォーレス
脚本: カール・タンバーグ
撮影: ロバート・L・サーティース
音楽: ミクロス・ローザ
助監督: セルジオ・レオーネ
出演:
 チャールトン・ヘストン(ユダ=ベン・ハー、ユダヤ王族)
 ジャック・ホーキンス(クインタス・アリウス、執政官)
 スティーヴン・ボイド(メッサーラ、エルサレムの司令官)
 ヒュー・グリフィス(イルデリム、族長)
 ハイヤ・ハラリート(エステル、シモニデスの娘)
 サム・ジャッフェ(シモニデス、ユダの使用人)
 マーサ・スコット(ミリアム、ユダの母)
 キャシー・オドネル(ティルザ、ユダの妹)
 フィンレイ・カリー(バルサザー、イルデリムの食客)
 フランク・スリング(ポンティウス・ピラトゥス、ユダヤ州総督)
 テレンス・ロングドン(ドルーサス、メッサーラの副官)
 アンドレ・モレル(セクスタス)
 マリナ・ベルティ(フレビア)
 ジュリアーノ・ジェンマ(ローマ人将校)
受賞:
 アカデミー賞
  ■作品賞
  ■主演男優賞 チャールトン・ヘストン
  ■助演男優賞 ヒュー・グリフィス
  ■監督賞 ウィリアム・ワイラー
  ■撮影賞(カラー) ロバート・L・サーティース
  ■劇・喜劇映画音楽賞 ミクロス・ローザ
  ■美術監督・装置賞(カラー) William A. Horning(美術)、Edward C. Carfagno(美術)、Hugh Hunt(装置)
  ■衣装デザイン賞(カラー) ElizabethHaffenden
  ■特殊効果賞 A. Arnold Gillespie(視覚)、Milo Lory(聴覚)、Robert MacDonald(視覚)
  ■音響賞 Franklin E. Milton、Metro-Goldwyn-Mayer Studio Sound Department
  ■編集賞 Ralph E. Winters、John D. Dunning
 NY批評家協会賞
  ■作品賞
 ゴールデン・グローブ賞
  ■作品賞(ドラマ)
  ■助演男優賞 スティーヴン・ボイド
  ■監督賞 ウィリアム・ワイラー
  ■特別賞 アンドリュー・マートン(戦車競技シーンの演出に対し)
 英国アカデミー賞
  ■作品賞(総合)
 アメリカ国立フィルム登録簿
  ■新規登録作品(2004年)
製作・ジャンル: MGM(米国)/ドラマ・史劇/212分

ベン・ハー 特別版 [DVD]








外国語映画賞や短編アニメ賞など、
明らかに対象とならない部門を除く17部門中
11部門でオスカーを受賞した歴史大作。

印象的なガレー船での労役や戦車競走に象徴される、
ベン・ハーの数奇な運命と復讐劇として
この映画を捉える人が多いことと思う。
しかし、"A Tale of the Christ" と副題が示すごとく
これは本来、キリストの物語として書かれたもの。
私自身、過去にこの映画を5, 6回は観ていると思うが
これまで、この副題に気づかなかった。

絶大なるローマの帝国主義と、
被征服者たるユダヤ民族の自由を求める信仰。
この対立が、幼なじみの2人を
生死を賭けた壮絶な争いに追いやるのである。

冒頭に挙げたように、ガレー船のシーンはあまりに有名。
打ち鳴らされる木槌の拍子に合わせ、魯を漕ぐ姿は、
その痛々しい境遇から、ベン・ハーに対する同情を誘う。

映画冒頭で
同胞を裏切れ、とメッサーラに請われるベン・ハーの
ファーストネームが "ユダ" とは
イエスを裏切る使徒こそ "イスカリオテのユダ" であることを考えるに
随分皮肉な設定である。
バルサザーからの、イエスの説話を聞きに行こうという誘いを断り、
それでも、磔に向かうイエスの後に付き従うベン・ハーの姿からも
作家が意識的に "ユダ" の名を冠したのであろうと想像できる。

その一方で、キリストを重ねているようなシーンもある。
本作ではその描写はなかったように思うが、
新総督ピラトゥスは、イエスを磔刑に処す際
ユダヤの王を揶揄し "茨の冠" を被せた、と聖書に記されている。
メッサーラを破り、戦車競走大会に優勝したベン・ハーは
このピラトゥスから "神" に贈るとの祝辞とともに "月桂冠" を授かる。
この場面ではつい、ユダ(=ベン・ハー)はイエスの鏡かとも考えた。

クレジットからJ・ジェンマが出演していることが伺えるのは
非常に興味深い。
メッサーラ傘下のローマ人将校の役らしいが
顔を見ても、はっきりとは見極められなかった。
登場するのは映画の前半、
脱獄したベン・ハーがメッサーラの部屋に押し入るシーンで、
セリフ無しでメッサラの横で身構えている副官がそれである。

今回久しぶりの鑑賞に当たり、字幕に新発見。
ベン・ハーの母・妹がかかる不治の病が "業病" と訳されていた。
私には、"らい病" と字幕が出ていた記憶しかない。
知らなかったのだが、
現在、この言葉は
差別用語だとして、使われることはほとんどないらしい。
私は今日の今日まで、
"らい病" に差別的ニュアンスがあるのを知らずに過ごしてきた。
ついでに言えば、
作品中に描写されているように
当時、万人がこの病を患った人間を差別していたのだから、
観客に、映画の時代背景を知らしめるためにも
差別的な含みのある言葉を用いた方が適当だとさえ感じる。
時代が時代だから
ハンセン氏病などと現代の訳語は与えられないだろうが、
私は "業病" なる単語も知らなかったため、改めて調べた。
そこで、知る必要のない差別意識の存在に遭遇するのである。
差別用語、と言われる言葉についていつも思うが、
使用しないよう啓蒙することで、却って
差別意識のない人間に、差別意識を植え付けることも多いのでは?
どんな言葉を使おうが、
意識があれば、言い方次第で差別になるのだから。

すっかり脱線してしまったが
本作は、何度観ても飽きない。
キリスト教の世界観に触れる入口としても、格好の素材だろう。
観たことのない人は、
3時間半超という長さにめげずに、是非観てほしい。

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